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アフリカ・フロントラインから見えてきた日本
vol.2 (3)
薄暗いクラブ&バーの中ですでに2時間近くが経とうとしていた。依然、男がオレに何を求めているのか、明確な形は見えなかった。
さっきまで異様に効いていた冷房も慣れてしまった。店の開店まで後30分、男は小難しい話意外にも、自分の身の回りの話とか、子供の話を聞かせてくれた。日本人女性との間に女の子が一人いるという。家族関係はそれほど上手く行っていないらしい。男は彼女を一度ナイジェリアに連れて行きたいらしいが、彼女は行きたくないと行っていると言う。それはある意味で正解かも知れない。
これ以上長居するのも嫌だったのでオレは、帰り際、もう一つ聞いた。
「そのディアスポラだけど、みんな一人一人で頑張っているわけではないだろ、どんなバックがあるの・・・・」
まさか、それこそマフィア・シンジケートとか、裏社会的バックでもあるのかどうか、気になるところだった。
男は堂々と答えた。
「ナイジェリア・ユニオン、それと大使館、オレタチはみな一緒だ」。
みんな一緒か・・・・=Aわずか2時間では何も見えてこない、しかし、10年近くもの間歌舞伎町で生きる男の顔にさほど不安は感じられなかった。
オレは大きなカウンターの上に置いてあるミュージック・ボックスを指して聞いた。
「どんな音楽をかけてるの」
「主にヒップ・ホップとか」
ボブ・マーリーが大好きなオレは、
「レゲエはやるの」と聞いてみた。
「ああ、もちろんさ、みんなそこで踊ってるよ」といって薄暗く狭いフロアを指差した。
今、ナイジェリア人たちが大挙進出しているのは東京、歌舞伎町だけではない。アジアにおけるもう一つの拠点、それはタイのバンコクだ。東京よりもはるかに多くの男たち女たちが貿易から飲食まで路地裏を拠点に汗を流している。
ラゴス→ナイロビ→ドバイ→バンコク→東京・・・、彼らのフロントライン、その東の端が東京、新宿歌舞伎町だ。そこには銃弾は飛び交っていない・・・・、だがしかし止めようにも止まらないディアスポラたちの熱い思いとエナジーが突っ走っている。
新宿歌舞伎町、そこは彼らのフロントライン。一人一人、彼らはみなその尖兵(spear-head)だ。
帰り際握手の後軽く肩と肩をぶつけ親愛の情を示した後、オレは別れた。クラブのドアを開け外に出ると、すでに辺りはネオンの海と化していた。
To be continued to the next FRONTLINE/2009年9月15日
★どんな形でもいい、そうした意識を持って世界に出て行き祖国のために有用な「Resources(資源=物、情報、体験etc)」をもたらす若者たちを探してオレは年に1回彼らと共にアフリカのフロントラインを旅している。遠い道程かもしれない、しかしそれは若者たち自身の将来と日本の未来への投資であると信じている。